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人工臓器から再生医療へ  -股関節と血管の再建-

岸上義弘 (岸上獣医科病院、京都大学再生医科学研究所 
再生医学応用研究部門 臓器再建応用分野)


股関節の再建

 股関節は、いろいろな疾患によって構造的に機能的に破綻する。股関節形成不全症、大腿骨頸部骨折、骨頭壊死症、股関節脱臼など、発症するとその処置が困難となる疾患が多い。特に大型犬では、その体重の負荷の大きさから、治療法の選択がより難しくなる。 以下、人工臓器と再生医療、それぞれの治療方法について比較する。

1、股関節の人工臓器

 まず「再生」とは対極にある人工関節について述べてみたい。「人工関節」「全置換」「トータルヒップ」と聞くと、非常に斬新で先端的な方法であるという感触を受けられる先生方が多いかも知れない。しかし本当のところはどうだろう。生体にとっていわば異物の塊を骨の髄に差し込んで、体重を支えたり激しい動きに対応しようとするのだから、かなり無茶な作戦である。
 一時期、セメントを骨髄に流し込んで人工関節のステム(人工骨頭の支えとなる脚の部分)を骨と一緒に固めてしまおうという方法が取られていた。もちろん、その セメントはまったくの人工物であり、2剤を混合すると化学的に重合するというもので、生体吸収性ではない。 セメントの重合熱によって骨が火傷を負ったり、セメントのモノマーが全身に流れ出し、ショックを引き起こしたり、マイクロムーブメント(歩くたびに骨はかすかにたわんでおり、ミクロの動きが発生している) が持続することによって徐々に緩みが生じたり、といったセメントの害が浮き彫りになり、あまり使われなくなった。人工関節が緩んでくると、犬は痛くて歩けなくなるのである。
 そこで登場したのがセメントレス法だった。セメントがいけないと言うなら、セメントなしで行こうと考えたのも無理はない。しかし、人医学領域では、これも同じ運命をたどって、使われなくなりつつある。そもそも人工関節はセメント法であれ、セメントレス法であれ、無理をして生体内に押し込むことに変わりはない。
考えられるその問題点としては・・・・

1,生体を破壊して装着する
2,力学的に異なる物質
3,人工関節と骨とは結合しない
4,摩耗粉と悪性肉芽
5,細菌感染
6,人工関節の脱臼

以上のことから骨吸収を起こしやすく、そしてその結果、人工関節の緩み(loosening)を起こすことがある点である。それぞれの機序を少し説明する。


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