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「生物学的整形外科」の新しい展開 (III)

岸上義弘 (岸上獣医科病院院長・大阪市獣医師会会員)

日本獣医師会雑誌 2005年 9月号 Vol.58 掲載


 (3)骨折癒合不全に対する骨再生の考え方と手技

 従来、こういった骨折癒合不全に対して、皮質骨移植・海綿骨移植といった方策が選択された。生物学的要素に乏しく、生理的活性が少ない部位に、無細胞の皮質骨(同種骨)を用いるのは最良の手段とは言えない。抗原性をなくすために同種骨は処理され、細胞やサイトカインを抹消してある。移植骨には骨誘導能はなく、骨伝導能だけがある。移植骨内に確実に血行が回復し、細胞が進入し、うまく生着するかどうかは未知数である。骨折部の生理活性の低い状況であるだけに、不安は残る。あるいはまた、危険ではあるが、冷凍骨は細胞成分やサイトカインを残存しているものもある。骨誘導能が残ってはいるが、抗原性も残存しているので拒絶反応が現れるかも知れない。もし拒絶反応が起こったら、断脚という悲惨な状況になるかも知れない。自家骨移植は抗原性に悩むことはないが、自己の他の部位を大きく侵襲し、しかも希望通りのサイズや形状の移植骨が得られにくい。
 海綿骨移植という方法は、骨折部の生物学的要素を補助するという目的においては皮質骨移植よりも優れている。海綿骨には幹細胞、造血幹細胞、ストローマ細胞、骨芽細胞、血小板、サイトカインなども含まれている。確かに骨を形成するためには、幹細胞は絶対に必要不可欠なものである。ただし全骨髄細胞のなかの幹細胞の数は非常に少なく(図5 →vol.7 ページ5 、鋭匙に3杯の海綿骨移植だけをもって「生物学的要素を飛躍的に改善した」とは言い難い。また、移植した細胞群がそのまま生着し、生き長らえるかどうかは、母床の悪い状態からしても予想できない。
 このように従来の骨折癒合不全の対処法には、メリットもあるが、それに応じたデメリットもあり、ブレイクスルーにはなり得なかった。私見であるが、骨折癒合不全を治癒するときの考え方は、骨折部の生物学的要素を復活するによって、本来の生理的骨折治癒課程をもう一度開始すること(つまり骨再生)が重要になるのではないだろうか。そのために準備すべきものを検討してみよう。


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