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「生物学的整形外科」の新しい展開 (IV)

岸上義弘 (岸上獣医科病院院長・大阪市獣医師会会員)

日本獣医師会雑誌 2005年 10月号 Vol.58 掲載


 <DEFK>
1、はじめに:膝蓋骨脱臼に対する治療法は従来からいろいろと考案され試行されてきたが、脛骨の大きな角度の軸回転を伴う重度の膝蓋骨脱臼症例に対しては有効な手立てが無く、難渋を強いられてきた。効率よく確実に痛み無く脛骨回転を解除する方法が待望されていた。本法は、脛骨の重度回転を安全確実に矯正し、グレード3と4の膝蓋骨脱臼を無理なく整復することを目標に発案したものである。

2、材料および方法:重度の脛骨回転を伴う膝蓋骨脱臼を持つ犬(8頭8肢、平均年齢1歳4ヶ月、平均体重2.4kg)に対して、次のような治療を実施した。

 常法通りに麻酔を実施し、脱臼方向から膝関節にアプローチした。大腿四頭筋、膝蓋骨および膝蓋靱帯を脱臼側の軟部組織から切離し、一旦反対方向へ脱臼させた。滑車溝を形成し、症例によってはパラガードを装着し、余剰の関節包を切開縫縮し、皮膚を閉創した。

 次に脛骨の回転を矯正するための創外固定を装着した。
大腿骨遠位に1本、脛骨近位に1本、それぞれ骨格に応じたネジ付きスタインマンピン直径1.6mm~2.4mm(以下ピンと略)を外側から挿入した。
ピン挿入の位置と角度は、それぞれのピン先端に人工糸を巻いて引き寄せたときに脛骨の回転が正しい方向に矯正されるよう、そして膝関節の可動域が制限されないよう、痛みが発生しないよう、Biomechanicsを考慮し慎重に決定した。

大腿骨遠位ピンは、側方からの刺入とし、成長板を傷害しないように留意した。
またパラガードを併用する場合には、まずパラガードを装着し、その脚部の隙間を通すように大腿骨ピンの通り道を決めプレドリルとする。そして改めて外測から本格的なピンを挿入する。

脛骨ピンは内方回転を矯正する場合には、斜め頭側から挿入した。外方回転を矯正する場合には、神経や血管に留意しながら斜め尾側から挿入した(図20)。次に両ピン端が水平となるポイントにてピンを切断し、先端を半切り状態にしてから曲げ、人工糸が脱落しないようエポキシパテを微量盛りつけた。ピン先端同士を引き寄せる人工糸としてスプリング・ゴム・絹糸などを用いた(図21)。

露出しているピンなどは全て綿花と粘着包帯にて包んだ。約1週間の矯正期間とし、その後人工糸を除去した状態で観察し、脛骨回転が再発するようなら、さらに約1週間矯正した。脛骨の再回転が起こらないことを確認し、手術から計3~4週間でピンを抜去した。もしも脛骨回転の矯正がうまく行かない場合には、オーバーリダクション(過矯正)を実施し、脛骨を過回転させる期間を数日設けた。


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