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「生物学的整形外科」の新しい展開 (VI)

岸上義弘 (岸上獣医科病院院長・大阪市獣医師会会員)

日本獣医師会雑誌 2005年 12月号 Vol.58 掲載


2、脊髄の再生

これまでの生物学の概念として、神経系は外胚葉から、筋肉・造血系は中胚葉から、肝臓などは内胚葉から形成されると考えられてきた。その垣根を越えて幹細胞は分化しないという常識が有った。しかし幹細胞を含む骨髄の間質細胞の多分化能が次々と発見されており、その様子を見ていると、胚葉という既成概念は、見直される段階にきていると感じる。幹細胞のもつ可塑性は案外大きいのかもしれない。

 その骨髄間葉系幹細胞を使って、脊髄麻痺を治療するという試みが始まっている。
 従来、重度の脊髄損傷に際して、侵襲を受けた脊髄は不可逆的に機能不全となり、回復しないと考えられてきた。しかし近年、脳も脊髄も再生する可能性があるという報告が散見されるようになった。幼若なマウスやラットにおいては、実験的に切断した脊髄が再び機能回復していくという結果も出ている。

 ここでは脊椎椎体脱臼による脊髄損傷性後駆麻痺となった猫に対し、2ヶ月半が経過した時点で、自己骨髄由来幹細胞を培養し脊髄病変部に移植し、症状の改善が獲得された1例を報告する(20)(21)。

 本例の猫の骨髄から骨髄液を採取し、幹細胞を培養増殖し、それを凝集して脊髄病変部に注入したところ、当初まったく動かなかった後肢が、片側ではあるが手術後約2ヶ月で前肢との協調運動を始めた。電気生理学的に脊髄を経由した筋電図を計測することにより、改善が認められた。獣医科領域の臨床症例であるため、病理学的検索は不可能である。
よってこの脊髄再生が自己幹細胞によるものか、ヘミラミネクトミーによるものか、判断はできない。しかし、通常の脊髄損傷では脊髄損傷後2ヶ月半経過したものでは、整形外科的な手技だけで回復することはないと言われていることから、自己間葉系幹細胞が何らかの働きをした可能性があることを示している。



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